桃色核電波

俺はな、インターネットメンヘラ芸人を10年やってんだ。

君は歯茎を焼かれたことがあるか

昨晩、友人と飲んでいた時ふいに親知らずが痛んだ。

 

虫歯のような神経に障る痛みではなく口腔周囲筋に力を入れると歯茎が痛む。腫れている気もするので恐らく智歯周囲炎だろう。夜中にもしかしたらもう痛まないのでは?と根拠の無い期待をしてぐっと力んでは「やっぱり痛い…」と不安に駆られた。

 

気を紛らわせるために友人に電話したところ友人から「5月になったら遠くに引っ越そうと思う」と告げられテンパって泣く。友人が引っ越すことになって泣くなんて小学生以来だろうか。奥歯も心も悲痛な叫びをあげていたが10分ほどして粗品YouTubeを観たら元気が出てきた。粗品って面白いなぁ。

 

翌朝薄ら寝ぼけながら歯医者の予約を入れなんとか急患として歯医者に向かう。

診てもらったところやはり智歯周囲炎だった。

 

「生えかけの親知らずの上に今まであった歯茎が被さっていてうまく磨けていないので、ここ、ちょっと切っちゃいましょう!」

 

えっ?あたしの歯茎、そんな軽いノリで切られんの?という思いとは裏腹にすぐ「わかりました」と口をついて出た。医療の前では素人は無力だ。

 

麻酔をし、女性のスタッフがなにやらガラガラと専用の機械を持ってきた。どうやらあのキャスター付きのレーザーで焼かれるらしい。麻酔が効くまでの間ミヤネ屋を観た。宮根誠司は不倫して世間からバッシングをくらってたのにまだお昼のワイドショーに出ていられるのすごいなぁ、私もこれから歯茎焼かれるけどがんばろ。

変なところで勇気を貰う。

 

「開いてくださーい」と言われ目をぎゅっと閉じながら口を弱々しく開けた。ピピピ…と機械音が鳴る。麻酔のおかげで何も感じないが恐らくこの時歯茎を焼かれていたのだろう。少し焦げ臭いにおいが食べ放題後半の焼肉屋を思いださせる。あー、歯茎も肉だもんなぁ。帰りたいなぁ。などと思ううちにオペは終了した。

 

術後の説明で当日の入浴と激しい運動を控えるよう言われた。なんてことだ、私は入浴と激しい運動を生業としているのに。急いで店に連絡を入れる。

 

今日は数日前から予約も入ってたのに。明日は予約埋まってないのに。今日はもう埋まってたのに。今日じゃなくて明日歯医者にすればよかった、最悪、最悪。

 

昨日から落ち込んでばかりだ。友達はいなくなるし、歯茎は焼かれるし、おかげで仕事にも行けないし。

 

自らへのせめてもの救済措置として帰りに好きなパン屋さんがあったので寄って帰る。パン屋さんのクロワッサンってさくさくでバターが甘くて美味しいよね。

昨日から心配してくれていた母に歯茎を焼いたこととパンを沢山買ったことを告げる。「あら」「山崎春のパンまつり開催」とだけ送られてきて舌打ちをする。

 

帰ってきてじゃがいものポタージュとクロワッサンを食べながら、アイドルマスターの実況を観た。

 

全部が大丈夫になった。貴方はついてこられるか、この大丈夫さに。